2018年01月01日

平成30年住職年頭挨拶

恵林寺檀信徒のみなさま、お変わりなく健やかに新春を迎えられましたことと存じます。

新年の冒頭から、悲しいお知らせをしなければなりません。

すでにお伝えしました通り、昨年十月二十日午後九時十分、先住職でありました恵林寺第二十一世不晦軒正道大亨(南條大亨)老大師は、薬石効なく世寿八十四歳を一期として、忽然と遷化されました。

二月末より足の衰えを自覚され、長年のかかりつけの医師のもとでリハビリ入院をしておられましたが、日常生活は変わることなくお元気で、リハビリ生活にもすぐに慣れ、悠々自適、むしろ病院での生活を楽しんでおられるようなご様子でした。

痰を詰まらせたことで体調を崩されておられましたが最後まで意識もはっきりしており、大事をとって私も夕方からお側に控えてはおりましたが、夜になって容体が急変。一時間ほどで、すっと静かに亡くなられました。

ベッドに横たわりながらも坐禅の「数息観」をしておられたのであろうと思います。最後まで姿勢を正し、まっすぐ前を見つめるかのように威風堂々としておられました。

禅僧の生き様、死に様を目の当たりに見せていただいた思いがいたします。

禅僧が世を去ることを「遷化(せんげ)」といいます。

「遷化」とは「化」つまり人を悟りへと導く場所を「遷(うつ)す」ことを言います。一度出家して僧となったならば、生まれ変わり死に変わり、どこに行こうと常に修行を積み重ね、人を導き続けなければなりません。この世を去っても、「安らかに眠る」ようなことではいけない...又、新しい世で一から修行を始め、再び三度出家をして人を救い導かなければならない...出家とはそういうものだと私たちは教えられます。

最期の老師のお姿は、もう次の修行を始めておられるような、そんな気迫さえ感じさせるものでした。

 

十月の二十八日午後六時から通夜、翌二十九日午前十一本堂において密葬が執り行われました。

あいにくの天候でしたが、東福寺管長幽松軒原田融道老大師を導師に、向嶽寺管長瑞松軒老大師、臨済僧堂師家無底窟老大師を始め、県内外から五十名を超える尊宿の御出頭を給わり、両日とも百名を超える参列者でお送りすることができました。

 

十二月十二日午後六時から「逮夜」、十三日午前十時からは「津葬」引き続いて「新忌齋」が厳修されました。

導師は、密葬の時と同じく、不晦老漢が修行をされたゆかりの東福寺から、管長幽松軒老大師をお招きいたしました。

逮夜には激しい風が吹き、あいにくの天候でしたが、津葬・新忌齋の日は朝からカラリと晴れ上がって穏やかな一日となり、妙心僧堂師家岫雲軒老大師、平林僧堂師家江楓室老大師を始め、妙心寺塔頭退蔵院和尚、如是院和尚、三光亭縁故寺院、東福寺僧堂會下松蔭会諸尊宿、部内和尚を中心に県内外から大勢の尊宿の御出頭を給わり、恵林寺総代、関係者併せて、恵林寺の広い本堂は一杯となりました。

この日は、平日にもかかわらず焼香者も四百名を超え、改めて不晦老漢の遺徳の大きさを実感いたしました。

 

このように、二ヶ月近くにわたる先住職不晦軒老大師のお送りの儀式は、法類・縁故寺院、そして総代始め壇信徒の皆様のお力添えをもちまして、無事に厳修することができました。御荷担いただきました皆様、ご参詣いただきました皆様には、この場を借りまして改めて心からの御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

現在、不晦老漢は、先々代住職である三光亭加藤会元老師によって建立され、すでに覧古室三浦一舟老師と会元老師ご自身が休んでおられる「無縫搭」におられます。

老大師遷化の後は、残された私どもがこの伝統ある名刹恵林寺をお護りし、ますます発展させていく使命を引き継ぐことになります。住職始め法類、縁故寺院、総代・壇信徒一同力を合わせていっそうの努力をしていく所存でございます。
皆様方のますますのお力添えをどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

平成二十九年度のご報告

 

平成二十九年度には、いまご挨拶の中で申しましたとおり、先住職不晦軒老大師の密葬、津葬・新忌齋の他に、次のようなことがございました。

例年通り放光寺と協力しての『恵林寺・放光寺除夜の鐘』と新年初法要の『祝聖(しゅくしん)』を皮切りに、正月二日の『恵林寺大般若祈祷』を挟んで、正月三日間の『大般若祈祷』を厳修。四日の住職『年頭回礼』は「三富」「牧丘」地区。七日には『七草粥』と『坐禅会始め』が、三十五名の参加者を得て行われました。九日には新装なった「八衞門座敷』において、表千家宗芳会による初釜、十六日には『檀徒年賀』、二十日には恵林寺花園会婦人部『御礼会』、二十八日には前年十二月から開始されました『恵林寺寺子屋』第一弾『恵林寺親子お茶教室』の稽古始め。

二月三日には『節分会』、八日には夢窓国師ゆかりの徳和村名取八衛門家の『薬師祭』が例年通り行われました。

三月十七日には『恵林寺彼岸法要』を厳修。二十二日、二十三日と(株)サンライズ・プロモーションの幹部社員向けの社員研修。二十六日には『第六回恵林寺講座』が開催。講師は湯之奥金博物館長の出月洋文氏、山梨県立考古博物館長の萩原三雄氏。

三月二十九日には恵林寺花園会婦人部の皆さんの『お茶会』が行われ、婦人部の皆さんに住職の点てるお薄と知足院和尚手造りの精進料理を体験していただきました。

四月一日、二日には主として県外の皆様のための第二回『恵林寺文化講座』を開催。十二日には『快川国師・信玄公毎歳忌』が開催され、例年以上の盛会となりました。二十七日には(株)ニューロン製菓の新入社員研修。

五月三日から五日にかけて(株)サンライズ・プロモーション新入社員研修。五日には仏前婚式が恵林寺本堂において荘厳に執り行われました。八日には『降誕会』、十日からは土蔵の改修工事が始まりました。工事は四ヶ月の期間をかけて九月半ばに完成。現在は恵林寺の什器が収蔵されております。

五月十四日には表千家前嶋社中宗芳会による『恵林寺茶会』が開催、二百人を超える皆様がお越しになりました。二十一日から二十八日まで大書院において第六十五回『山梨県愛石会水石展』が『春の水石展』として開催。二十七日、二十八日には第三回『里仁会恵林寺合宿研修』。

六月十五日から『恵林寺寺子屋』第二弾として『大人のための実用ペン字教室』が開講。週二回のペースで行われていますこの講座は好評につき、七月からもう一クラス新たに開講。講師は、恵林寺に職員として勤めてくださっている書道家の西山鳳陽先生。十七日には『第七回恵林寺講座』が開催。講師は武田氏研究会の山下孝司氏と内藤和久氏。

八月二十六日には奈良市会議員一行「奈良政策研究会」の皆様の研修旅行。二十八日、二十九日には、六回目となる山梨大学表千家茶道部による『恵林寺茶道合宿』が行われました。

九月二日、三日には第三回となる慶應MCC講座『禅の智慧』参加者による合宿研修『己事究明会』。九日、十日には、四月に引き続き第三回『恵林寺文化講座』。二十九日には恵林寺開山夢窓国師毎歳忌宿忌、翌三十日には半齋が例年通り厳修。十月一日には、夢窓国師坐禅洞窟登拝を行いました。

十月六日には『花園会婦人部』の研修旅行、十九日二十日には『恵林寺総代会研修旅行』で本山妙心寺参拝。

十月二十日の閑栖老大師の遷化を受けて、十月二十八日、二十九日に予定されていました第二回『恵林寺曝涼展』は中止となりましたが、十一月五日の第二回『乾徳山 恵林寺茶会』は、お茶をこよなく愛された閑栖老師に捧げる追悼茶会として予定通り執り行われました。

十一月十一日には五月に続いて、本堂において『仏前結婚式』。午後には『第八回恵林寺講座』が開催。講師は、住職古川周賢老大師、横浜国立大学准教授の高芝麻子氏。十九日には昨年一二月に開始されました『恵林寺親子お茶教室』第一期生の卒業式。二〇日には茶道表千家流小笹晃宗匠を講師に第一回『恵林寺日本文化講座』。

十二月六日には恵林寺徒弟の得度式が本堂において行われました。新たに弟子入りした徒弟、哲心禅士はこの春に専門道場に掛搭する予定です。十日には茶道表千家『山梨吉祥会』の稽古。

そのほか本年度は、海外からの観光客の皆さんにたいして英語による坐禅指導、茶道体験実習を開始しており、お手伝いをお願いしております知足院和尚の活躍によって大変好評で、TV・新聞にも再三取り上げていただきました。

 

住職の活動

 

二月四日浜松の臨済宗方広寺派本山方広寺青年会「ふれあい法話」で講演:『心頭滅却すれば 火も自ずから涼し』。七日には(株)東京エレクトロン山梨工場「TELキャリア・セミナー」において講演『マインドフルネス ~ぶれない自分の軸をつくる~』、二十四日には(株)アイ・ラーニングの社員研修講座に講師の一人として参加。

四月八日には『武田家旧温会総会』出席、九日からNHKカルチャー横浜ランドマークタワー教室において、講座『禅の生き方に学ぶ』全六回の開講。十八日には『向嶽寺秋葉山大祭』に出頭。

五月二十日から四年目となる慶應MCC講座『禅の智慧』(全六回)を開講。二十七日には山梨県看護連盟総会で講演:『禅の生き方に学ぶ』。二十八日には「南アルプス市山梨県人会」第7回総会で講演:『心頭滅却すれば、火もまた涼し...』。

六月四日には授業寺である妙心寺塔頭退蔵院開祖忌に出頭、五日には『エイムズ市訪問団歓迎式典』に出席。甲州市と姉妹都市の関係にあるエイムズ市との友好二十五周年を記念する贈り物として墨跡『和楽』を奉呈。二十二日には、第一四回臨済宗妙心寺派和歌山教区『花園会研修大会』『花園会地方大会』において講演:『風林火山 武田信玄と禅』。二十八日には、ご縁のある表千家の小笹晃宗匠の『空裡会』による瑞峯院掛け釜に参加。

七月二十六日からは「山梨県放送番組審議会委員」として月に一度の会議に参加。

八月二十七日には茶道表千家同門会山梨県支部の主催による第九回『茶の湯文化にふれる市民講座』において講演:『禅語の味わいかた』。

九月十七日には第五回甲信越在宅医療推進フォーラム:『これからの在宅医療と介護を考える ~よりよい生(逝)き方を考える~』において特別講演:『禅の死生観』、引き続き長田在宅クリニック名誉院長の長田忠孝氏との特別対談。翌十八日には『吉祥会盛岡大会』、二十四日には『同門会総会』に出席。二十七日には(株)RAC社員研修『禅とリベラルアーツ』の共同講師を務めました。

十月七日には奈良興福寺『塔影能』に出席、翌八日奈良『依水園』において柳沢文庫の柳澤ともこ理事長・保徳副理事長と会食、十五日にはTRUE SPIRIT TABACCO COMPANY主催による次世代のクリエイターを支援するFUTURE  CULTIVATORS PROGRAM 2017 作品発表会のゲスト審査員を務めました。二十二日から、NHKカルチャー横浜ランドマークタワー教室において講座『禅語入門 禅の名言を味わう』全六回を開講。

十二月五日には第三三三回『得々三文会』において講話『修行ノススメ其ノ四 ~沢庵禅師『不動智神妙録』入門~』、九日には恵林寺とも縁の深い八王子広園僧堂前師家古心庵老大師が遷化され一五日密葬に出頭。

 

また本年も引き続き、公益財団法人『禅文化研究所』発行の季刊『禅文化』第二四三号 -特集 遠諱報恩大摂心からの一歩 同第二四四号 -特集 袈裟と法衣  同第二四五号 -特集 白隠禅師シンポジウム~京都~ 同第二四六号 -特集 禅寺と庭- に、『禅の見方、考え方(七~一〇) 私とは何者か - 己事究明(四~七)』を連載。

そのほか、臨済宗建長寺派宗務本院発行の冊子『巨福』平成二九年雨安居第一〇五号に、『禅との出会い』という標題で寄稿させていただきました。

 

来年度も引き続き、名刹恵林寺に相応しい活動を続け、禅の布教の拠点としての責務を果たしていく所存でございます。

壇信徒の皆様、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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