2021年07月31日

8月1日から、8月特別朱印『火裏蓮』朱印をおわけいたします...

令和3年8月1日から、恵林寺八月特別朱印『火裏蓮(かりのれん)』朱印をお分けいたします。

 

令和3・4年の『武田信玄公生誕五〇〇年・四五〇回忌』を記念して、恵林寺では毎月一つ、特別朱印を準備しております。
八月葉月(はつき)は、恵林寺の蓮にちなんだ『火裏蓮』朱印です。

 

禅の世界には『碧巌録(へきがんろく)』という書物があります。

さまざまな禅僧たちの修行上の遣り取りが一〇〇集められ、それぞれに漢詩と注釈が添えられたもので、「宗門第一の書」として大切にされています。
この中に『洞山無寒暑(とうざんむかんじょ)』という問答が収められていますが(第43則)、猛暑の中で、あるいは極寒の中でどう修行をするか、ということが問題となっていて、そこに次のような偈頌(げじゅ)が紹介されています。

 

  両刃(りょうじん)鋒(ほこさき)を交(まじ)えて避くることを須(もち)いず
  好手(こうしゅ)還(かえ)って火裏(かり)の蓮(れん)に同じ
  宛然(えんぜん)として自(おのずか)ら衝天(しょうてん)の気有り

 

剣豪同士が刃(やいば)を交え、進むことも退くこともできないギリギリのところに至っては、炎の中でも萎(しお)れることなく花を開かせるような境地に到らねば、活路は開かれない。そこには、天を衝(つ)くような気概が満ち満ちているのだ...というのです。
幕末から明治にかけて活躍した剣豪山岡鉄舟は、剣の道を生きていく途中で大きな壁に出会い、禅の道に身を投じました。そして「公案」として師から授けられたこの言葉に全身全霊で取り組み、十年以上にわたって努力を重ね、そのかいあって心眼が開き、剣の奥義を体得した、とされています。

仏教では泥の中から美しい花を咲かせる蓮を悟りの象徴として大切にします。
欲望、執着、憎悪、嫉妬、不安...泥のように汚れたこころの奥底に、清らかな救いの種がある。その種を大切に養い育てるならば、いつか泥の中から美しい蓮が大輪の花を咲かせる。
しかし、辛く厳しい試練の中で、ともすればその清らかな蓮の種も凋(しぼ)み、萎れて枯れてしまうかもしれません。だからこそ、厳しい逆境の中にあっては、こころを鼓舞して、力強く覚悟を固め、燃え盛る紅蓮(ぐれん)の炎の中でも凋むことなく花開く「火裏の蓮」が必要となるのです。

「火裏の蓮」とは、逆境に負けないわたしたちの覚悟や決意のことなのです。
猛暑の中だからこそ、暑さに負けない強い心で毎日を送って欲しい...
そのような思いで、恵林寺にも訪れたことのある山岡鉄舟居士の座右の言葉を記した特別朱印を用意いたしました。

山岡鉄舟居士は、明治十四年四月、快川国師三百年忌の折に、師である天龍寺無異室(むいしつ)滴水冝牧(てきすいぎぼく)老師とともに恵林寺に登拝されました。
恵林寺本堂には、その時に鉄舟居士が書かれた文書がいまも掲げられています。

             恵林寺 山主 白

 

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